LyXは、Linux/Unix、WindowsおよびMac OS Xで動作するオープンソースの高機能文書プロセッサです。これが「文書プロセッサ」と呼ばれるのは、標準的なワードプロセッサと違って、LyXが、外見ではなく文書の構造に基づいた執筆法を支援するためです。LyXは、視覚的なレイアウトをソフトウェアに任せて、ユーザーが執筆に専念できるようにします。LyXは、事前に定義されたルールセットにしたがって整形を自動化させるため、もっとも複雑な文書の類でさえも全般にわたって統一性を持たせるようにすることができます。LyXは、オープンソースであり産業品質の組版エンジンであるLaTeXをバックグラウンドで使用することによって、高品質でプロフェッショナルな出力を生成します。

LyXを使えば、短いノートや手紙は一瞬です。しかし、LyXがもっとも輝きを発するのは、技術文書や博士論文、学会報のような複雑な文書を書いているときなのです。

LyXは、以下のような機能を細密にコントロールすることができます。ページ余白、ヘッダ・フッタ、空白・字下げ、行揃え、複数段の箇条書きのブリット型、洗練された表エディタ、共同プロジェクトのためのemacs流のバージョン管理インタフェース、基本的な変更追尾機能、平行した文書バージョンのための「派生枝」機能、などなど。このパッケージは、たとえば書簡・論文・書籍・スライド・ハリウッド向け脚本などの多くの標準的な書式とひな型を同梱しています。

LyXは、ユーザーが親しんでいるWYSIWYGのワープロに似た外観を提供します。しかしながら、Microsoft WordやWordPerfectに親しんだユーザーは、LyXの一部の基本動作に当惑するかもしれません。たとえば、スペースバーを繰り返し打っても何も起こりません。これはそういう設計なのです。LyXは、ユーザーのために、インテリジェントに適切な空白を挿入します。

ワープロに比べて、LyXは、もっと簡素で抽象化されたフォント管理法を提供します。これもそのように設計されているのです。「指で描くかのような」フォント選択は敬遠されるべきであり、「文字様式」で一括指定することが望ましいのです。

まず「基本ルール」を設定し、文書の各要素を適切なカテゴリに帰属させます。たとえば、LyXに、ある行が節見出しであると告げるのです。LaTeXは、その節見出しを目次に加え、節の名前をページヘッダに配置し、ページ上で節見出しに特別な「ボールド体」表示をさせ、ラベル番号を割り当て、相互参照や引用のために、文書の他の部分にこの見出しが何ページにあるかを伝えます。これで、伝統的なワードプロセッシングに伴う頭痛の種の多くが消え失せることになります。

LaTeXは、何百もの章ラベルや節ラベル、何千もの脚注や挿入された画像、入り組んだ相互参照、複雑な複数階層のアウトライン、整形された目次や図一覧、膨大な索引や書誌情報などをたやすく処理することができ、そのすばらしい出力で有名です。「生の」LaTeXをすでにご存知のユーザーであれば、LyXが、LaTeXへの完全な透過性とLaTeX文書の完全なエクスポート能力を持つことがわかるでしょう。

LyXは、同種のものの中でも秀逸な、完全に統合された数式エディタを備えており、LaTeXの伝説的な数式組版能力に、WYSIWYGの「指してクリック」式の便利さを付け加えます。科学的な原稿を手がけるのであれば、これは最良のものといえます。ぜひお試しください。

LyXは、初のWYSIWYM(What You See Is What You Mean)ワードプロセッサと見ることができます。LaTeXのよく知られたすべての組版インテリジェンスは、アウトライン・ブラウザとして機能する目次ウィンドウや、(図表キャプションや節見出し、ページ、文献引用への)「ライブ」相互参照リンク、自動化された複数階層の節わけと箇条書きの連番、などといった視覚的なコントロールを通じて、ユーザーに提供されます。ユーザーは、LyXに、これは標準テキスト、これは節見出し、これは脚注、これは挿入された図の下にくるキャプション、などのように、文書中の特定の単語や行をどのように取り扱うかを指示します。選択部分をクリックすると、WYSIWYMのインタフェース(実のところ、ひじょうにWYSIWYG的です)が、すっきりとした直感的な「視覚的なヒント」を提供します。

このアプローチは、人間工学的な利点を持ちます。ユーザーは、好きなように画面フォントを拡大することができますが、最終出力の余白や他の整形に影響を与えることなく、すべてのテキストを画面上に残すことができます。このため、ユーザーは小さな画面でも(あるいは目が疲れていたり、視力がよくなくても)楽に作業をすることができ、少しページプレビューをするだけで最終出力を得ることができるのです。

LyXには、初心者用入門篇やユーザーの手引き、複雑な機能を説明した説明書の別冊など、多くの秀逸なオンラインヘルプを同梱しています。これに対応した、各言語用のLyXメニューシステムがあり、実行時にそこから選択することができます。

伝統的なワードプロセッサからのデータのインポートは、コピー&ペーストを使用して行うことができ、またLaTeX形式へのエクスポートを通じても可能です。LaTeXへのエクスポートを既定ではサポートしないワードプロセッサについては、通常、アドオンが利用可能です。あるいは、HTMLへエクスポートしてから、それをLaTeXに変換することも可能です。

LyXプロジェクトチームについて

LyXプロジェクトチームは、ボランティアの貢献者たちによる世界的コンソーシアムです。時を通じて、ひじょうに多くの人々が力を貸し、LyXの各リリースを可能にしてきました。完全な貢献者一覧をご覧ください。LyXの「蔭の実力者」として、Lars Gullik BjønnesとJean-Marc Lasgouttesは特記されるべきでしょう。

...そして、すべてを始めたMatthias Ettrichに特別の感謝を捧げなくてはなりません。